アステールの実技カリキュラムは1年間でプログラムされています。各学期は1学期の客観性養成、2学期の構成力養成、3学期の独自性養成と特色付けられています。また、最も基礎的な客観的事項はダイジェストで講義されるので、どの学期からでも編入できるようになっています。
 1学期は、主に客観的な事項に関する理論講義とその演習を中心にカリキュラムが組まれています。美術の基礎力総体が持つ各要素ごとに短い目標が設定された演習課題を一つ一つ積み重ねてゆくうちに、知らぬ間に総合的な基礎力がつくように順序づけられているのです。
 デッサン等の理論の講義の後、その実践練習として演習が行われます。演習課題は実践課題と違い、「総合的に作品を作る」のではなく、もっと基礎技術の「修練」を目指した課題です。例えば、石膏像の基本形態を5分で把握できるようになる演習、パースもののモチーフを20分でライン描きできる演習、混色された色を正確に再現できるようになる演習、直径30cmの石膏球を3時間で想定デッサンできるようになる演習etc. 。つまり「〜ができるようになる」ことを目指したゲーム感覚のプログラムです。このように、1週間ごとに変わる各演習にはその項目を習得するための目標を設定し、その積み重ねが 結局客観的なデッサン力を知らぬ間に高めているというプログラムになっています。
 2学期は1学期に身に付けた力を総合化し、自分なりの工夫を主体的に表現してゆくことを、美術教養とからめながら行うカリキュラムです。
 学期の前半は構成学や美術史などの講義を通じて、歴史的な名作や構成のセオリーを知ることで、アイデアの出し方、発想法、色彩技法の習得などを目指します。模倣などを通じて高度な描写力を高める演習課題もありますが、実践応用課題が多くなり、自分の力で考え、構成することの楽しみを覚えてゆきます。
 学期の後半には、研究生各々が自分の表現スタイルを研究し、磨き上げるプログラムとなっています。各研究生は自分の個性にあった表現を、基礎力に裏打ちされた形で講師とともに築き上げてゆきます。
 また2学期を通じて講義される美術の専門教養は、受験ばかりか、入学した後にも大学の先生との距離をうめてくれます。美術史・人体解剖学・図学など専門家なら当然身に付けておくべき教養の骨格をつけておくことは、美術の専門家になる上で大変重要だと考えています。
 3学期は受験の時期です。受験生は直前講習会となり、高校2年生以下は通常3学期授業となります。
 受験生は、傾向と対策にこだわらずに基礎から積み上げてきたからこそ、この時期の傾向と対策は大きな実りをもたらします。各人の専攻や受験日程もまちまちですので、画一的なカリキュラムは非効率的です。そこで3学期は思いっきり受験生のわがままがきける体制をとります。朝の10時から夜の9時まで好きな時に来て、好きな課題、受験する大学の課題を好きなだけ時間をかけて制作させます。制作が終わったら講師に個別に講評とアドバイスを受けることができます。(詳細は、秋頃に配布される直前講習会案内を御覧ください)
 2学期の段階で自分のスタイルを確立している者は、そのスタイルが様々な課題に柔軟に対処できるように研究するようになります。そういう状態ができ上がっていたら受験は無敵です。スタイルが完成できなかった者も失望することはありません。講師と相談し、もてる力で受験を突破する作戦を立てます。この時期、受験そのものもゲームのように楽しむポジティブなメンタリティがアステールでは育ちます。
 1年間を単位としてプログラムされている以上、4月から入学している状態はカリキュラム上、もっとも区切りが良くなります。しかし、1〜2年生は必ずしも客観事項に関する講義を受けた後に実技をスタートするよりも、わからないなりに描いてみて、疑問をたくさん蓄積しておき、その後、講義を受けた方が学習効率が上がる傾向があります。疑問をため、飢える期間という意味で1〜2年生の中途入学はむしろ望ましいものです。
 しかし、受験生の場合は次の四月を待ってはいられません。そこでアステールでは、六月入学と九月入学はダイジェストの実技理論の講義で、形態法、明暗法、遠近法、色彩学、一般構成法などの入門基礎の講義を行いフォローしています。また、夏期講習、冬期講習でも、初心者コースとして同様の内容を受講できます。途中で入っても本人の自覚次第で追いつくチャンスは十分あります。
 特に外部の美術予備校から中途の時期に編入してきた学生が、意外と伸びているのは、所属していた美術予備校で体系的な理論と学習法を学ぶことができずにいたため、たくさんの疑問が蓄積されていたからだと考えられます。彼らは大変飢えた状態でアステールから養分を吸い上げてくれます。